里親制度ってなに?どんな生活をしているの?
耳にすることはあるけれど、実はよく知らない里親制度。
今年度は、里親さんを支える人たちにインタビューに行ってきました!
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里親支援事業では、今年度は里親さんを支える人たちにインタビューを行っています。
今回は、養育里親(*)をしている両親のもとで育ったNPO法人おかえり理事長・枡田ふみ氏から、子ども(実子)の立場から見た里子や里親家庭の生活についてうかがいました。
*養育里親:養子縁組を結ばずに一定期間、子どもを預かり育てる里親。
(奈良市にお住まいの方が里親になるための申請・訪問調整は、奈良県中央こども家庭相談センターが行っています。詳しくはこちら)。
【平成30年度連載】「里親家庭におじゃまします!~里親を支える人たち編~」
*第1回(児童養護施設・愛染寮の家庭支援専門相談員の菅尾さん)へのインタビューはこちら
*第2回(奈良県里親会・松舟会長)へのインタビューはこちら
*第3回(児童家庭支援センターてんり・阪口さん)へのインタビューはこちら
*第5回(元里子の山川さん)へのインタビューはこちら
【平成29年度の里親インタビューはこちら↓】(注:コラム内のお名前は全て仮名です)
*第1回(小学生の女の子を預かる佐藤さん)へのインタビューはこちら
*第2回(子どもと特別養子縁組をした田中さん)へのインタビューはこちら
*第3回(定期的に親と会っている姉妹を預かる加藤さん)へのインタビューはこちら
*第4回(ベテランの養育里親の山田さん)へのインタビューはこちら
*第5回(中高生を多く預かった養育里親の鈴木さん)へのインタビューはこちら
*第6回(特別養子縁組をした息子がもうすぐ成人を迎える高橋さん)へのインタビューはこちら
———-家族構成を教えてください。
両親ときょうだいと子どもたち(里子)と一緒に暮らしています。
———-枡田さんは、ご両親が現在も里親をしているということですが、初めてご両親が「里親をしたい」と言ったのは枡田さんが何歳の時ですか?また、それに対してどう思いましたか?
私が20代前半の頃でした。私はその頃保育士をしていました。 両親が私たちきょうだいに「里親をしたいんやけど、どう思う?」と相談してくれたのが、私と「里親」との出会いです。 「里親」という言葉やなんとなくのイメージはあったものの、よく分からないというのが正直な印象でした。家族で話し合う中で、子どもを預かるのだから慎重にならないと…という意見と、やってみないとわからないからまずやってみようという意見がありました。その後、さらに話し合いを続け、里親をしてみようと話がまとまりました。 |
———-実際に里子が家に来たときは、里子とはどのくらい年が離れていたのですか?また、そのときはどんな感じで接していたのですか?
初めてやってきた里子とは10歳くらい離れていました。
「里子」と聞いて小さい子どもをイメージしていたので、思春期の里子がやってくると知ったときは、どんな子が来るのだろうという戸惑いもありました。
実際に里子がやってきて、それまでのお互いの生活習慣や経験したことの違いに驚くことや戸惑うことがありました。はじめの頃は日常の生活音(ドアを開け閉めする音や声など)のようなささいなことにも過剰に反応していたように思います。また、私が年上ということもあり、「いいお姉ちゃんでいなくちゃ」と肩に力が入っていたように思います。
———-その後、どのように関係を築いていったのですか?
たくさん話しをしました。一日の出来事や好きな音楽、好きな食べ物や苦手なことなど、まずはお互いを知るところから始まりました。
家族でも子ども同士でもたくさん話しをし、時には家族会議をして、それぞれが思っていることを伝えあったり、いろんなところへ出かけたりしながら徐々に関係を築いていったように思います。家族そろってご飯を食べる、誕生日をお祝いする、四季折々の行事を楽しむ…里子と生活する中で、自分がそれまで当たり前だと思っていたことが誰にとっても当たり前なことではないんだと感じることが多くありました。
里子が来て数カ月たち、里子が修学旅行に行った日の食事のとき、ふと食卓の上の食器がいつもより少ないこと(里子の食事の分がないこと)に違和感があったんです。里子がいることが当たり前になってきたんだなとその時に感じました。
———-里子が家庭に来て、困ったなと思ったことがあったら教えてください。
当時保育士をしていたこともあり、職員のように振る舞っていたり、年齢が離れていたので親のような感じで接していたり、きょうだいとして接したり…自分の立ち位置がよくわからなくなる時がありました。戸惑ったり悩んだりすることもありましたが、少しずつ肩の力が抜けてきて、だんだんと「妹」へと変わっていきました。
———-里子が家に来たことで何か変化を感じたことがあれば教えてください。
それまで以上に日々の生活を大切にするようになりました。家族でお出かけしたり、四季折々の行事を大切にしたり、生活が豊かになったなぁとよく思います。
そして、里子と毎日をどう楽しく過ごすかを考えることで、自分と違う背景や性格の人を受け入れられるようになってきたように思います。
我が家を巣立ち、成人した里子とは、今でも一緒にお出かけしたり、お酒を飲んだりしながら当時の思い出話に花を咲かすこともあります。一緒に暮らしていたときはどこかで“姉”としてがんばっていた部分があったのか、里子が我が家を巣立った後のほうが自然に接することができているなと思うこともあります。
また、里子との出会いから「NPO法人おかえり」を設立し、里親家庭や児童養護施設等を巣立った人たちを支える活動を始めました。活動を始めて今年で9年目になります。
(枡田さんが設立した、「NPO法人おかえり」のホームページはこちら)
———-里親になりたいと思う方の中にも、実子がおられる方がいらっしゃいます。そうした方々に、実子の立場からアドバイスをお願いします。
実子がおられる方は年齢にもよると思いますが、里親になることについて実子とたくさん話してほしいと思います。そしてその時に、実子の気持ちも聞いてもらえればと思います。
我が家の場合は、里親に登録する前も、児童相談所から里子を我が家に受け入れる話を打診された時も、里子がやってきた後の生活をどうしていくかも、みんなで話し合ったので、ある程度心の準備ができてよかったなと思っています。
また、里子を受け入れた後も、里親さんと実子だけの時間があってもいいかなと思います。私の場合、里子がやって来てから、母と二人だけでカフェに行っていろんなことを話す時間がありました。結局最後は里子の話にはなっていたのですが(笑)、母と二人だけで過ごす時間があったことは、とても嬉しかったです。
———-里親家庭の実子として、同じ立場の人にメッセージをお願いします。
里子が我が家にやって来てから、生活の仕方や考え方、経験してきたことの違いに驚くことや戸惑うことがたくさんありました。
里親をしている両親と里子にはそれぞれ児童相談所(奈良県の場合は子ども家庭相談センター)の担当者がいて、定期的に我が家へ訪問し話を聞いてもらう姿を見て、実子の私たちきょうだいにも里子がやってきたことで変わった生活について話を聞いてくれる「担当」の人がいてくれたらいいなと思っていました。同じ立場の人と出会うことも、日常生活の中ではなかなか難しいものもありますが、自分だけで抱え込まないでいてほしいと思います。
里子がやって来てから私が心がけていることは、言葉で伝える、ということです。いろんなことを思ったとしても、思っているだけでは親にも里子にも周りにも伝わりません。自分だけで葛藤せずに、話し合ったり、時には立ち止まったりして、自分がどう思っているのかを、周りに伝えていくようにしてほしいなと思います。
私も里子と暮らし始めたときは戸惑うことや葛藤することもありました。けれど今、巣立った里子たちが我が家に帰ってきて、両親やきょうだい、そして今我が家で生活している里子たちと楽しそうに過ごしている様子を見ると、よかったなと思います。きょうだいとも、両親が里親をしてくれてよかったねと話すことがあります。自分の中では、里子との出会いがあったことで、心の幅が広がったのかなと思っています。
今でも巣立った里子さんたちと連絡を取り合っている枡田さん。笑顔でいろいろな思い出を語ってくださいました。枡田さんが理事長をつとめる「NPO法人おかえり」では、里親家庭の実子が自由に訪れることのできる「実子サロン」を平成30年11月から始めたそうです。同じ立場の人と出会える場所になればと思っているそうです。
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