里親制度ってなに?どんな生活をしているの?
耳にすることはあるけれど、実はよく知らない里親制度。
今年度は、里親さんを支える人たちにインタビューに行ってきました!
◆里親制度についてのページはこちら
◆奈良市フォスターサポート(里親支援)のページはこちら
◆偶数月は「さとおやミニ講座」開催しています
◆奈良市里親啓発CM“黒板アートde里親啓発プロジェクト!”特設ページはこちら
里親支援事業では、今年度は里親さんを支える人たちにインタビューを行います!!
今年度第1回目は、生駒市にある児童養護施設・愛染寮で家庭支援専門相談員として勤務する菅尾さんです。里親として登録するときの実習の受け入れなどをおこなっています。
(里親になるための申請・研修・訪問調整は、奈良県中央こども家庭相談センターが行っています。詳しくはこちら)。
【平成30年度連載】「里親家庭におじゃまします!~里親を支える人たち編~」
*第2回(奈良県里親会・松舟会長)へのインタビューはこちら
*第3回(児童家庭支援センターてんりの阪口さん)へのインタビューはこちら
*第4回(養育里親をしている両親のもとで育ったNPO法人おかえり理事長・枡田ふみさん)へのインタビューはこちら
*第5回(元里子の山川さん)へのインタビューはこちら
【平成29年度の里親インタビューはこちら↓】(注:コラム内のお名前は全て仮名です)
*第1回(小学生の女の子を預かる佐藤さん)へのインタビューはこちら
*第2回(子どもと特別養子縁組をした田中さん)へのインタビューはこちら
*第3回(定期的に親と会っている姉妹を預かる加藤さん)へのインタビューはこちら
*第4回(ベテランの養育里親の山田さん)へのインタビューはこちら
*第5回(中高生を多く預かった養育里親の鈴木さん)へのインタビューはこちら
*第6回(特別養子縁組をした息子がもうすぐ成人を迎える高橋さん)へのインタビューはこちら
保護者との関わりも大切にしながら育てています
———-愛染寮についておしえてください
愛染寮ができたきっかけは、戦災孤児を救済するためでした。そのため、当初は保護者のいない子どもたちがほとんどでした。最近は、保護者の病気や虐待などで、家庭で過ごすことが難しい状態になって来る子どもが多いです。
本寮では、家庭との調整をおこなう、家庭支援専門相談員を置いて支援をおこなっており、保護者との関わりも大切にしながら子どもたちを育てています。支援の仕方は子どもによって違うので、児童相談所(奈良県ではこども家庭相談センター)や保護者と相談しながら決めることになります。
———-子どもたちが愛染寮で暮らす期間はまちまちなのですか?
同じ法人内に(宝山寺福祉事業団)、いこま乳児院があり、かつてはそこから愛染寮に入所してくる子どもたちが多かったです。保護者と生活できなくなる事情があって乳児院に入所し、2~3歳になると愛染寮に入所し、そのまま18歳を迎える、という子どもたちです。
しかし今は、家庭へ戻ることが難しい子どもに関しては、乳児院にいるときに特別養子縁組をすることを前提に里親さん(養子縁組里親)のもとへ行く子どもも増えました。
———-菅尾さんはどんなことをされているのですか?
私は家庭支援専門相談員として勤務しています。
家庭支援専門相談員の主な仕事は、児童相談所や保護者とのやり取りの窓口です。その他にも、奈良県内の市町村のショートステイやトワイライトステイの受け入れの窓口や、里親として登録するための認定前研修の実習の受け入れなど、様々なことをしています。
*奈良市のショートステイでも愛染寮(同じ法人内にあるいこま乳児院も)を利用することができます。
*ショートステイ:児童を養育している家庭の保護者が、疾病等の事由や家庭養育上の事由、又は仕事等の社会的事由により、児童の養育が一時的に困難になった場合に利用できる事業。ショートステイの場合、7日間を限度に児童を児童福祉施設で預かります。(奈良市の場合は児童福祉施設もしくはショートステイの受け入れ先として登録した里親家庭)
———-子どもたちはどのような生活をしているのでしょうか?
特に変わったことはしていません。小学生~高校生は平日は地域の小学校・中学校や高校に通っています。友だち同士で遊びに行ったりするなど、比較的自由に過ごせるようにしています。
里親になるための研修のうち、実習の受け入れを行っています
———-先ほど、里親さんの認定前の研修の受け入れをされているという話が出ましたが、里親さんとの関わりはどのくらいあるのですか?
里親さんと関わることが多いのが、里親になるための認定前研修の実習の受け入れと、里親登録されている方の更新研修の実習の受け入れの時です。
*里親になるためには、座学の研修と、施設等での実習などを受ける必要があります。里親の種類や登録についてはこちらのページをご覧ください。(里親になるための申請・研修・訪問調整は、奈良県中央こども家庭相談センターがおこなっています。)
———-里親になるための実習はどのように行われているのでしょうか?
まず、施設の説明をします。施設や入所している子どもたちについて分からないことがあったときには、ここで質問をしてもらいます。その後、ご夫婦で同じ日程で実習に来られている方は夫婦別々に、子どもたちと過ごしてもらいます。女性は幼児ホームで就学前の小さな子どもたちと遊んだり、女子ホームで小学生くらいの女の子たちと部屋や外で過ごしています。男性は男子ホームで小学生の男の子たちと過ごしてもらうことが多いですが、みんな一緒に外で走り回って遊んでいることが多いです。 |
———-里親さんが実習で苦労されることなどはあるのですか?
男性の場合は、体力ですね(笑)。
天気がいい時には、特に男の子たちは外で遊ぶことが多いです。そのため、とことん遊ぶ子どもたちと一緒に遊んだあと、ヘトヘトに疲れている方はいらっしゃいます・・・
あとは、トラブルがあったときですね。
基本的には、職員の目がある範囲で子どもたちと過ごしてもらうことにしているのですが、それでも子ども同士のトラブルはおきます。職員が仲裁に入ることも多いですが、どう対応したら良かったのかなど、その後、職員と里親さんとで話し合う時間を設けたりします。
連携しながら子どもも里親さんも支えていけたらと思います
———-愛染寮から里親さんのもとへ行く子どもも多いのですか?
保護者のいる子どもが多いので、愛染寮から里親さんのもとへ行く子どもはそこまで多くはありません。しかし、中には保護者との関わりや交流がない子どもたちもおり、そうした子どもたちが愛情のある家庭で暮らせることは、それはとてもいいことだと思います。
里親さんのもとへ子どもが行くことになった時には、子どもの環境が急激に変わらないよう、愛染寮で面会交流をしたり、慣れてきたら一緒に愛染寮の外に出かけたり、里親さんの家に泊まりにいったりということを続け、うまくお互いの相性があえば、里親さんの家で過ごすことになります。里親さんと子どもの相性でだけでなく、タイミングなどの影響も大きいですね。 この子が年頃になったら大変だろうなぁと思う子どももあり、子どもたちを受け入れてくださる里親さんには本当に頭が下がります。 |
———-児童福祉法が改正されるなど、子どもがどのような環境で育つのかということが、近年話題になる機会も増えてきました。今後児童養護施設としてどのように里親さんと協力していきたいと感じていますか?
私たちの役割は、子どもたちがこれから生きていくうえで、どのように力を身につけていくかを考え、子どもたちを育てていくことだと思っています。今できることを精一杯していくことが大切だと思っています。また、これからは地域のニーズにももっと応えていきたいと思っています。
施設では、複数の大人で子どもたちを育てるため、経験の豊富な職員からスーパーバイズがあったり、職員同士で話し合うことで、子どもを育てることを、自分とは違う視点から見ることができることも多いです。けれど、里親さんは家庭で子どもを見ていくことになるため、なかなかそうしたことができません。うまくいっているときはいいのですが、何かトラブルがあったとき、関係機関が連携して、里親さんを支える仕組みが必要になると思っています。愛染寮では、里親さんのお話を聞いてアドバイスやフォローをしたり、里親さんのレスパイト(*)に利用してもらうことで、連携しながら子どもも里親さんも支えていけたらと思っています。私にできることがあれば、いつでもお手伝いしますよ!
*レスパイト:里親の一時的な休息のための援助のこと。乳児院や児童養護施設、他の里親などに子どもを預けることができます。
あたたかな笑顔でインタビューに応じてくださった菅尾さん。インタビューが終わった時、ちょうど子どもたちが下校してくる時間でした。子どもたちの「ただいま」を菅尾さんの笑顔が迎えていました。
6月のミニ講座では、愛染寮と同じ法人内にある、いこま乳児院から職員さんをお呼びしてお話をうかがう予定です。お楽しみに!
◇偶数月は「さとおやミニ講座」開催中◇(該当ページにリンクします) |