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里親支援ミニコラム「里親家庭におじゃまします!」第6回

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里親制度ってなに?どんな生活をしているの?
耳にすることはあるけれど、実はよく知らない里親制度。
それなら、里親さんに直接聞いてみよう!ということで、里親さんに直撃インタビュー!
里親になったきっかけや子どもとの生活の様子など、いろいろうかがいました。

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◆偶数月は「さとおやミニ講座」開催しています
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第6回目は、養子縁組里親の高橋さん(仮名)です。特別養子縁組をした息子さんとご主人の3人家族です。
*養子縁組里親…養子縁組することを前提に子どもを預かる里親のこと。詳しくは里親制度のページをごらんください

 【連載更新中♪】
平成30年度新連載「里親家庭におじゃまします!~里親を支える人たち編~」はこちら

【平成29年度の里親インタビューはこちら↓】(注:コラム内のお名前はすべて仮名です)
*第1回(小学生の女の子を預かる佐藤さん)へのインタビューはこちら
*第2回(子どもと特別養子縁組をした田中さん)へのインタビューはこちら
*第3回(定期的に親と会っている姉妹を預かる加藤さん)へのインタビューはこちら
*第4回(ベテランの養育里親の山田さん)へのインタビューはこちら
*第5回(中高生を多く預かった養育里親の鈴木さん)へのインタビューはこちら

 

里親として登録をしてから2年が経ち、やっと子どもと会うことになりました

今回は高橋さんのご自宅でお話をうかがいました。高橋さんの息子さんは現在大学生。本人は留守だったのですが、息子さんが来たころの写真、小学校の頃の記録など、たくさん用意してくださっていました。

———-里親になったきっかけを教えていただけますか?

結婚後、ずっと不妊治療をしていました。30代後半を過ぎ、私自身の体調が悪くなってきました。子どもはずっと欲しかったのでいろいろと情報収集をしました。その中で養子縁組という方法があることを知りましたが、なかなか決心がつきませんでした。夫婦で悩みながら、40歳までは不妊治療をしよう、それでもだめだったら養子縁組をしようという結論にたどり着きました。養子を迎えるということは、どうしても子どもが欲しいという決心が必要でした。私たちの場合は義母が私たち夫婦の背中を押して応援してくれ、養子縁組後も隣人や親戚に、義母から説明してくれました。そのことは私たち夫婦にとって、とても心強かったです 

———-子どもとすぐに会うことはできたのですか?

研修は、座学だけではなく児童養護施設での実習や家庭訪問など、思っていたよりも時間がかかりました。また、里親登録をしたら、すぐに養子縁組をする子どもを紹介してもらえると思っていましたが、これも思っていたよりも時間がかかり、長い間そういう話がなかなかありませんでした。

どんな子どもが来るのだろうと最初はいろいろと想像しました。「女の子がいいな」「5歳くらいがいいな」などと思いながら待ち続けましたが、なかなか子どもとの縁に恵まれませんでした。やきもきして待つうちに、1年が過ぎ、2年が過ぎました。私たち夫婦の年齢もその分上がってきます。次第に、「女の子がいい、男の子がいい、など考える事をやめよう」「もし子どもの話があったら、その子は自分たちに縁のある子どもだから、断らないようにしよう」と思うようになり、子どもの幸せのための里親であるということが理解できるようになりました。
 
そして2年が経ってやっと、子どもの話がありました。そのときはとても嬉しかったです。ただ、あまりに待ちすぎて、子どもの名前は聞いたものの性別を聞くのが怖くて、実際に会いに行くまでは男の子か女の子か分からない状態で行くことになりました。けれど、どんな子であっても、私たちと縁があったこの子どものことを大事にしようと思いました。

ひと目見たときからとても可愛かったです

———-息子さんと初めて会った時のことを教えていただけますか

私たちはもう40歳を過ぎていたので、私たちとあまり年が離れすぎないよう、2歳の子どもとの縁組の話が進むことになりました。
夫婦でドキドキしながら乳児院に行きました。目のクリクリした、可愛らしい男の子でした。ひと目見たときからとても可愛く、それから会いに行くのがとても楽しみでした。

乳児院の先生方も、私たちが行くときは「お父さん来たよ、お母さん来たよ」と言ってくれるのですが、肝心の本人はなかなか私たちのほうに寄って来てくれません。他の子どもたちと遊ぶ日が続きました。そのうちに、やっと私たちのことを気にすることが増え、私が他の子どもと遊んでいるのを怒るようになってきました。初めて膝の上に座ってくれた時は、本当にうれしかったです。

そのとき私はまだ仕事をしていたので、週に1日乳児院に通うことになりました。主人は週末に行っていました。そうした交流が数カ月続いた後、私は仕事を辞め、週3日くらいで乳児院に通いました。お互いが慣れてくると、乳児院の近くを散歩に行ったり、電車に乗りに行ったりしながら私たち夫婦と子どもだけの時間が増え、その後我が家へ1泊したりと、だんだんと家で暮らす方向へ進んでいきました。暮らす環境が劇的に変わらないよう、子どものペースに合わせて交流をしていたように思います。私たちの場合は、子どもと半年くらい交流をしてから我が家に迎えました。これからずっと我が家で一緒に暮らす、というときは、感慨深いものがありました。と同時に「この子をしっかり守っていかなくては」という覚悟もありました。

両方の両親は、実の孫のように可愛がってくれました。不思議なことに、私の父と面影がよく似ていました。近所の人からも、「おじいちゃんとよく似ているね」とよく言われ、父はとても喜んでいました。

私たち夫婦は本当によい人間関係に恵まれました

 ———-育てていく中で、大変だったエピソードを聞かせていただけますか?

大変だったのは、子育てそのものが私たち夫婦には全く初めてだったことです。特に病気になったときは、自宅でハラハラしながら何度も熱をはかり、夫婦とも慌てて病院に連れて行きました。お医者さんがあきれるほど頻繁に連れていくこともあり、「お母さん、このくらいは大丈夫だよ」と言われることも多々ありました…。次第に子育てにも慣れてきて、このくらいならまだ大丈夫、ちょっと心配だから早めに薬を飲ませておこう、など、私も少しずつ親らしくなってきました(笑)。

———-住んでいる地域では大変なことはありませんでしたか?

私たち夫婦は本当によい人間関係に恵まれました。
子どもが小さいころに通っていた病院は養子縁組のことをよく理解してくれ、特別養子縁組が成立する前は苗字が違うのですが、受付で名前を呼ぶときは私たちの苗字で呼ぶように変更してくれました。また、地元の子ども会の人たちも、地域に子どもが増えたと、笑顔で私たち家族を迎え入れてくれました。いろいろな人に支えられて子育てをしていることを実感しました。

里親同士で話ができることが、本当に心強かったです

———-里親同士での交流はどのような感じなんですか?

乳児院に通って子育ての実習をしていたころ、ちょうど同じように養子縁組の話が進んでいた別の夫婦と知り合うことができました。子どもの年齢も近く、特別養子縁組をした時期も近いので、今でも交流が続いています。子どもの成長の話だけでなく、子どもに養子であることを話す(真実告知)のことや、学校にどう説明していこうかなど、様々な話ができるのでとてもありがたく思っています。
 
また、里親同士で情報を交換する、おしゃべり広場(注1)にもよく行きました。おしゃべり広場で話ができることが、本当に心強かったです。おしゃべり広場には、養子縁組里親さんだけでなく、養育里親さんもいらっしゃいます。養育里親さんはご自身の子ども(実子)も里子も、どちらも育てた経験のある方もいるので、私が「子どもがこんなことをして困っている」と話すと、「私も(自分が産んだ)子どもを育てるとき、同じようなことがあったよ」と言ってくれたことがあり、びっくりしたことが何度もありました。例えば赤ちゃん返りなどをした時、私は、養子だからそうしたことをすると思っていたのです。子どもを育てていくことに関しては、実子・養子に関係なく、子どもの成長や親の思いにはある程度共通するところがあるということを知り、当たり前のことに思えるかもしれないですが、その時の私には目からうろこの落ちる思いでした。養子縁組里親さんだけでなく、養育里親さんと話せたことも、とても貴重な時間でした。

(注1)おしゃべり広場
県内で開催されている、里親さんのためのサロンです。
子どもを預かっている・いないに関係なく自由に参加でき、近況や里親同士の経験を聞きあって参考にしたり、児童養護施設に配置されている「里親支援専門相談員」がアドバイスをしたりしています。

   

息子には特別養子縁組であるということをずっと伝えています

———-息子さんは特別養子縁組で親子になったことを知っているのですか?

はい、話しています。
里親関係の勉強会などで、なるべく小学校入学前に話をしておいたほうが良いこと、その後本人が聞いてきたら、何度も話していくのが良いということを聞いていました。そのため、小学校入学前に最初に話そうと決めてはいました。養子縁組をした子どものことを扱った絵本なども用意して、心の準備をしていました。けれどなかなか勇気が出ずにずるずると日が過ぎていきました。結局、話すことができたのは入学式前日でした。最初はできるだけ楽しい雰囲気の中で話すのが良いと聞いていたので、お風呂に一緒に入っている時に、お母さんは赤ちゃんが産めなかったけれど、子どもがほしいと願っていたらコウノトリさんがあなたを運んできてくれてとても嬉しかった、という内容の話をしました。

その後、たびたびそのことを聞いてきました。一度スーパーで大きな声で聞いてきたことがあり困惑しました。息子に、「お母さんとの秘密のことだから、外で大きな声で話してはいけないよ」という話をしました。

息子には「20歳になったら自分の産みの親のことを知りたかったら協力するよ」と言っています。ただ、産みの親が今どういう生活をされているのかを知りません。どんな方かも聞いたことがありません。どうぞ「幸せな家庭を築いておられますように」と願っています。

 

何があってもこの子の盾になろうと思ってきました

———-息子さんを今まで育ててきた思いを聞かせていただけますか?

息子と初めて会った時から、何があってもこの子の盾になろうと思ってきました。また、どんな可能性があるのかが分からないので、出来る限りいろんなことを経験させたいと思ってきました。小さなころは習い事やスポーツなど、様々なことをさせました。スポーツは得意でしたが、勉強はあまり得意ではなかったようです。

将来のことを考えると、大学までは行かせたかったので友人に相談したら、息子さんが家庭教師として来てくれることになったのです。年も近く、兄弟のように接してくれました。家庭教師で来ている時は、勉強ももちろんですが、いろいろな話もしていたようです。なかなか勉強が苦手な息子でしたが、昨年何とか大学に合格することができました!今は勉強にバイトに頑張っています。

———-来年息子さんは成人を迎えますが、どんな大人になってほしいと思っていますか?

あたたかい家庭を築いてほしいなと思います。私たち夫婦はいつでも息子を見守っていますが、血のつながりがないということに不安をもつことがあるかもしれません。もしかしたら今不安に思っているのかもしれないと思うこともあります。私たちは実子をもつことができませんでしたが、息子はそうでないかもしれません。家族をもつことで、自分は一人じゃないということに気が付いてほしいです。私たちは息子を特別養子縁組で迎えたことで、家族のありがたさを夫婦だけでいたときよりもさらに実感することができましたが、息子がそのことを実感するのは、自分の家族をもったときだと思います。そのときに、私たちのことや、自分が育ってきた時間を思い出してもらえたら嬉しいです。息子が結婚しても子どもができない可能性もありますが、そのときはいろいろアドバイスも応援もしたいです。

 

息子と我が家で暮らすことになったときの感動は今でも鮮明に覚えています

———-里親になりたいと考えている方にアドバイスをお願いします!

大事なのは「決心と覚悟」だと思っています。

特別養子縁組をすると、ずっと子どもと一緒の生活です。今までの夫婦だけの生活とは全く違う、子ども中心の世界になり、後戻りはできません。私たちは、養子を迎える事を決心するまでと、子どもを委託されるまでに時間がかかりました。しかし、すぐに養子を迎える話が来る場合もあり、里親として登録をしたらいつでも子どもを委託されてもいいという覚悟が必要になります。私の場合は職場の引き出しに退職願を入れていて、いつでも出せるようにしていました。私は子どもと一緒に過ごす時間を多く持つ必要があると思いました。子どもと一緒に生活していく自分をシミュレーションしておかないといけません。

また、子育てするには周りの協力も必要になります。私たちは両親がとても協力的だったので、とても心強かったです。大変なことも多いですが、養子縁組をして自分たちの子どもを育てるという喜びは大きいです。子どもと初めて会ったとき、息子と我が家で暮らすことになった時の感動は、今でも鮮明に覚えています。 

つたない私の体験談ですが、ひとりでも多く里親になってくださる方がいらっしゃったら嬉しいです。
 


ひとつひとつ、丁寧に思い出を語ってくださった高橋さん。
現在のステキな息子さんの写真も見せていただきました。
息子の中にある可能性は未知数だから、と今までいろいろなことを経験させてあげつつ、それが親の押し付けにならないようにと常に立ちどまりながら息子を見守る。息子さんへの愛情がたくさん伝わってくる話をたくさん聞かせていただきました。

今年度の「里親家庭へおじゃまします!」はこれで最終回となります。
ご協力いただいた里親さん、ありがとうございました!
 
*平成30年度「里親家庭におじゃまします!~里親を支える人たち編~」はこちらからどうぞ

 

 ◇偶数月は「さとおやミニ講座」開催中◇(該当ページにリンクします)

 

引用元