里親制度ってなに?どんな生活をしているの?
耳にすることはあるけれど、実はよく知らない里親制度。
それなら、里親さんに直接聞いてみよう!ということで、里親さんに直撃インタビュー!
里親になったきっかけや子どもとの生活の様子など、いろいろうかがいました。
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第4回目は、ベテラン養育里親の山田さん(仮名)です。長年里親をしている山田さんは、里親として今までに10人ほどの子どもたちを預かってきました。
*養育里親…養子縁組を結ばずに一定期間、子どもを預かり育てる里親のこと。詳しくは里親制度のページをごらんください
【連載更新中♪】
平成30年度新連載「里親家庭におじゃまします!~里親を支える人たち編~」はこちら
【平成29年度の里親インタビューはこちら↓】(注:コラム内のお名前はすべて仮名です)
*第1回(小学生の女の子を預かる佐藤さん)へのインタビューはこちら
*第2回(子どもと特別養子縁組をした田中さん)へのインタビューはこちら
*第3回(定期的に親と会っている姉妹を預かる加藤さん)へのインタビューはこちら
*第5回(中高生を多く預かった養育里親の鈴木さん)へのインタビューはこちら
*第6回(特別養子縁組をした息子がもうすぐ成人を迎える高橋さん)へのインタビューはこちら
自分に近い思いをもっているなと感じました
———-里親になったきっかけを教えていただけますか?
里親をしている人のインタビュー記事を新聞で見たのがきっかけです。その頃、自分の子どもを育てている最中でしたが、何か人のためになることをしたいと考えていました。そんな時に記事を読んで、インタビューを受けている人の、何かしたいという思いとか、子どものことをしたいという思いが、自分に近いなと感じました。そして、里親としてならば、今の自分の生活に取り入れながら活動ができるなと思いました。また、親と暮らせない状況の子どもたちがいるということを知ったということも大きかったです。どこに電話をしたらいいか分からず、その記事が載っていた新聞社に電話をして、児童相談所で登録するということを教えてもらいました。
最初は2週間とか1ヶ月とか、短い期間で預かることが多かったです
———-子どもを預かるまではどのくらいかかりましたか?
私の場合はすぐに児童相談所からお話がありました。最初は生まれたばかりの赤ちゃんでした。お母さんが病気で入院をすることになり、2週間ほどのお預かりということでした。いきなり赤ちゃんが来たことで家族みんな大喜びで、あっという間に2週間が過ぎました。特に主人は、その子がお母さんのもとに帰る日の朝、「ずっとここにいてもいいんだよ」と話しかけていたほど可愛がっていました。
———-短い期間で預かることも多かったのですか?
最初は2週間とか1ヶ月とか、短い期間で預かることが多かったです。また、一人だけの場合もあれば、兄弟や姉妹で預かることもありました。
———-長い期間で預かることもあるのですか?
短い期間で何回か預かった後、数年という長い期間で預かってほしい子どもがいるという話がありました。その中の一人は、中学生の頃にうちに来て、大学卒業まで預かっていました。高校・大学受験を一緒に乗り越え、就職するところまで一緒にすごしました。今はひとり暮らしをしていますが、近所に住んでいるのでよく遊びに来ます。彼女にとってはうちが実家のような感じなのかもしれません。
今まで築いてきた親子関係を崩さないように関わっています
———-実の親と交流している子どもを預かったことはありますか?
実の親と交流しているかどうかということは、子どもによって様々です。今まで預かった子どもや、今預かっている子どもも、定期的に親と関わっている子どももいれば、ほとんど交流のない子どももいます。定期的に親と会っている子どもに関しては、今まで築いてきた親子関係を崩さないように関わっています。子どもに合わせてこちらの体制を変えている感じです。
———-親子関係を崩さないように関わるというのは?
以前預かっていた兄弟の話ですが、最初は2人とも預かってほしいということで預かっていました。預かっていたのは数年ですが、その間も実家に泊まりで帰ることがあったり、実親と一緒に出かけることがあったりしました。実親が経済的にも精神的にも安定してきた時期に、もう小学生になっていた兄が先に家に戻りました。兄が実家で落ち着いて生活できるようになってきた頃、弟も実家に帰っていきました。
しかしその後、やっぱりしんどいということでもう一度預かることがありました。そして、我が家でもう一度数か月預かった後、二人で実家に帰っていきました。親御さんが頑張りすぎても大変だし、子どもの環境が変わりすぎても子どもが大変なので、実家だけ、里親家庭だけ、という生活ではなく、里親家庭にいるけれども実家とつながりをもち続ける、実家にいるけれども何かあったときには同じ里親家庭に行ける、という状態になっていました。子どもがどこで暮らすのかということについては、児童相談所が中心となり、子どもにとってよりよい方法がとられます。
あらためて考えてみると、自分の子育ての方法しか知らなかったんです
———-ご自身でも3人の子育てを経験していらっしゃいますが、里親としての子育てと何か違いはありましたか?
子どもも育てていたし、何とかやれるだろうと思っていました。しかし、あらためて考えてみると、自分の子育ての方法しか知らなかったんです。預かる子どもたちは様々です。自分が今までしてきた方法でうまくいくこともあれば、うまくいかないこともありました。そんなとき、里親会(注)の研修で、子どもにどう対応するか勉強できる機会があったので参加しました。そのことでずいぶん楽になった部分もあります。
(注)里親会…里親相互の資質の向上を目的とした研修会や親睦を深めるレクリエーション、里親開拓のための啓発活動などをおこなう団体。里親に登録したときに里親会にも入会することが多い。各都道府県などにあり、奈良県には「奈良県里親会」がある。
大変だった時は、毎日毎日ヘトヘトでした…
———-今まで何人くらい預かってきたんでしょうか?
10人くらいです。
———-その中で、やはり大変だったこともあったんですよね?
ええ、それはもう、たくさん(笑)
———-具体的に大変だったエピソードなどはありますか?
大変だったことは子どもによってだいぶ違いました。育てにくさを感じる子どももいました。その中でも一番大変だったのは、預かった子どもが日常のひとつひとつにごねていた時でしょうか…
例えば食事をしている時に私が食器を置くとそれが気にいらない、食事がおわって歯磨きを促すとそれも気にいらない、出かけるときになって靴下をはきたくない…ひとつひとつに時間がかかり、スムーズにいかなかったんです。それもすべて日常のことだったので、毎日毎日ヘトヘトでした。しかもそれが数年間続いたんです。何かを私がすると反対のことをしたがる。今振り返って思えば、注目してほしいと思っていたのかもしれませんが、そのときは本当に大変でした。
———-それはどういう風に収まっていったのでしょうか?
一番は時間でしょうか。私は子どもに対しての対応が工夫できるようになってきました。特に自分自身が感情的にならないように、今の自分の状態を客観的に見ながら子どもに接することができることが増えました。また、子どもも成長とともに落ち着いてきました。また、一緒に生活する時間が長くなり、お互いのことを知ることができたことも大きかったです。
しんどい時間の方が長いんですけど…やめようと思ったことはありません
———-大変そうですね…
ええ、大変ですよ(笑)。時間で言うとしんどい時間の方が長いかもしれないですね(笑)。
———-そのなかで、里親を続ける原動力って何でしょうか?
確かに、しんどい時も多いのですが、里親を一度もやめようと思ったことはないんです。子どもを育てていく中で、ふとした子どもの表情や言葉に、楽しさややりがいを感じる瞬間があります。その気持ちが忘れられない。そこからまだやりたい、という思いが湧いてくるんです。しんどいけれども、しんどい時もコツコツ今できることを続けていると、良かったと思う瞬間がどこかにあるんです。だからやめられない。
自分が得ているものの方が大きいなと感じることも多いです。しんどさを越えたからこそ自分にとって財産となる経験をすることができた、それは里親をやっていなかったら感じられなかったものだと思うんです。我が子の子育てもしてきましたが、もっとたくさんの子どもたちの成長に関わることができました。里親をしているからこそ経験できることだと思っています。
———-最後に、里親になりたいと思っている人に一言お願いします。
まずやってみてほしいと伝えたいです。体験して実感してほしいですね。子どもから学ぶもののほうが多いです。確かに甘い話ばかりではないのですが、しんどさを越えたからこその楽しさややりがいを、あなたも感じてみませんか?
———-ありがとうございました。
たくさんの子どもを預かっているので、それぞれのエピソードは何年も前の話のはずなのですが、昨日のことのように語ってくださいました。そして話をしている山田さんの目がとても温かかったのが印象的でした。
次回は1月掲載の予定です。お楽しみに!
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