奈良市フォスターサポート(里親支援)シンポジウム(報告)
里親制度が子どもの健やかな成長にプラスになる制度であること、多くの方にご理解いただくことで里親も里子も過ごしやすい奈良市になることを目的としてシンポジウムを開催しました。当日の様子を報告します。
◯日時:平成28年9月3日(土)午後1時30分~午後3時30分【シンポジウムは終了しました】
◯場所:はぐくみセンター9階大講座室
◯参加者数:80名
第一部 「里親をめぐる奈良県の現状について」
講師:高田こども家庭相談センター所長 倉西道明氏
里親のルーツが奈良時代の悲田院にあるという説もあるという紹介のあと、里親の種類や特徴、施設との違いなど里親制度について、また他府県と比較しながら奈良県の里親委託の状況について説明がありました。里親と里子のエピソードの紹介をとおして里子の置かれた状況をより具体的に理解することができ、家庭的な環境のもとで、特定の大人による継続的な信頼関係の構築と愛着形成が子どもの養育に必要であると締めくくられました。
(倉西所長の講演の様子)
第二部 パネルディスカッション「里親は地域の身近な存在」
コーディネーター:岩朝しのぶ氏(NPO法人日本こども支援協会)
パネリスト:
井元男氏(大阪市里親会所属:平成16年里親登録、今までに養育里親として10人以上を養育している)
池戸旬男氏(大津市里親会会長:平成8年里親登録。今までに37人の子どもを養育。現在はファミリーホームを運営
している。)
実際の里親家庭の日々の生活について具体的な経験の話をうかがい、里親制度について理解を深めました。
(左から池戸さん、井さん、岩朝さん)
(1)委託を受けて困ったこと・悲しかったこと
「試し行動」(里子が、里親にわざと困らせる態度をとって愛情などを図る行動のこと)のその行動自体ではなく、子どもが試し行動をせざるを得ない自身の行き場のない怒りや悲しみにもがいている姿、その姿を見ることがやるせないというお話がありました。
(2)委託を受けてうれしかったこと
委託を受けた子どもは18歳になれば委託解除になり、実親の元へ戻ったり、自立し我が家から巣立っていきますが、定期的に実親とともに我が家へ遊びにきたり、自立した子どもが立ち寄ったりしてくれることが、子どもの成長も見え、「里親冥利につきる」という話を、温かなまなざしで話されていました。
(3)来場者へのメッセージ
里親の思いを聞いたところ、「里親は大変だ」という答えは多いですが、その反面やって良かったという答えもまた多いです。特に子どもの成長を肌で感じられることはかけがえのない喜びです。子どもたちが家に来るときは、「血よりも縁」と思い委託を受けています。このシンポジウムを機に里親について関心をもっていただき、一人でも多くの方に里親登録をしてほしいと思います。
アンケート結果(抜粋)(アンケート回収数43人)
・今後、里母さんの話も聞いてみたい。里母さんの苦労もあるかな。
・想像以上に大変な取組みをされて来られた里親さん。実際の取組みを知れてよかった。
・とても温かいお話をありがとうございました。何も知らなかったことに気づきました。
・子どもの心を大切に、未来が幸せになるように育ってほしい。そのためにこの制度がもっと充実してほしい。
来場者から活発な意見や質問もあり、里親制度に対する関心の高さがうかがえ、また、制度の必要性についても理解していただいたのではないかと感じました。今後、さらに多くの方に対して、里親制度の啓発・理解に向けて取り組んでいきたいと思います。
里親制度については、下記のリンクをクリックしていただくか、キーワード検索をして、ぜひ里親制度について理解を深めていただければと思います。
◇厚生労働省(「社会的養護」「里親制度」でサイト内検索可能)
(参考)子どもの家庭養育推進官民協議会
すべての子どもが愛情豊かな理解ある家庭環境のもとで成長することができる社会をめざして、自治体と民間団体(計33団体)が協働し、家族分離の予防や養子縁組・里親委託の推進などの取り組みを進める協議会です。
奈良市も参加しています。
参加団体(順不同):
宮城県、福島県、長野県、三重県、岡山県、広島県、山口県、鳥取県、徳島県、高知県、宮崎県、千葉市、静岡市、浜松市、福岡市、柏市、横須賀市、大津市、奈良市、日南市、ヒューマンライツウォッチ、Living in Peace、全国里親会、全国養子縁組団体協議会、キーアセット、静岡市里親家庭支援センター、里親支援センター「なでしこ」、日本ファミリーホーム協議会、CVV(Childrens Views and Voices)、CAPNA(Child Abuse Prevention Network AICHI)、G1サミット、日本ユニセフ協会、日本財団